◆展望◆
大国同士の組み合わせ。
歴史上、実力的には今一歩の時も、常にタイトルを取ってきたドイツ。逆に、どれだけ強くても優勝と縁が無かったスペイン。
今大会のタレント力、これまでの試合内容から言ってもスペインがドイツを上回っているのは間違いない。
しかし、フットボールを知り尽くすヨーロッパの人々は両国の歴史とメンタリティを考え、「どちらが勝つか判らない」と答えるだろう。
EURO96の優勝時にはイングランドのリネカーが、「フットボールは1つのボールと11人で戦う競技。でも、最後に勝つのは、いつもドイツと決まってるんだ」
と、ドイツの勝負強さを皮肉った。
個人的にドイツの優勝を予想した身であり、マラドーナを倒した時代からドイツファンを自認しているのだが、今大会はスペインが勝つかも知れない。
逆に言えば、スペインが殻を破れる、唯一最大のチャンスである。今回、優勝できないようなら、また暗黒の「優勝候補どまり」に戻ってしまうことだろう。
もしも優勝を飾ることが出来れば98年のフランスのように、黄金時代を築くことが出来ると思う。
もともと、地力のある国なのは世界中が認めるところ。勝者のメンタリティさえ身に着ければ怖いものはない。
◆試合直前情報◆
スペイン側はビジャが前節の負傷により欠場の見込み。代役はセスクとの情報。ビジャは得点王争い最有力だった為、実際に欠場となれば残念。
しかし、セスクをビジャの位置に入れてもロシア戦は完勝だった為、アラゴネス的には問題ないか。トーレスがイマイチ本領発揮できていないだけにどうか。
グイサにも出番はあると思われる。
ドイツもバラックが負傷との情報。こちらはブラフの可能性もある。相手をかく乱させる心理戦かも。バラックは02W杯の決勝を累積警告で出られなかった経緯もあり、
今回は思うところがあるはず。さらにレバークーゼン時代、チェルシーでのCLは決勝で敗退の経験がある。バラックがカップを掲げる瞬間は訪れるか。
お互いの戦力比較をしてみると、
まず、前線は大会随一の破壊力を誇るスペインが有利。ただし、セットプレーの質などではドイツも引けを取っておらず、つけいる隙があるとすればそこか。
中盤だが、クアトロフゴーネスを誇るスペインは世界でも有数のクオリティ。ドイツもシュバイニー、バラックなど中盤は強みではあるがスペインには及ばない。
ただし、質が違うので、テクニック対フィジカルになると思われる。
そしてDF。これはロシア戦によって評価が一変。不安視されたスペインに穴が見つからない。逆にドイツはラームの上がりは評価するものの守備に関してはザル。
同じく、攻撃にも守備にも定評のあるS・ラモスと比べれば・・・どちらが上かは言うまでもない。
そして最も差が大きいと思われるGK。聖なるGK、サン・イケル・カシージャスに比べ、コーチングも不安でアーセナルの控えだったレーマン。実力はあったかもしれないが
衰えが隠せない。一試合だけの復活は、ない話ではないが、ギャンブルであることは間違いない。安定感がモノを言うGKで安定感がない時点で厳しい。
こうして分析を行ってみると、戦力値では間違いなくスペインが有利といえる。
多くの選手、識者の見解でも、やはり「実力はスペインが上。」ただし、「ドイツはあくまでもドイツ」
思えば、この数年間、無敵艦隊は「優勝候補」どまりではあったものの、その実力が一定水準を下回ることはなかった。常にレアル、バルサを中心とした一流の選手がいた。
ラウールやペップ、メンディエタ、イエロ、キコ、ルイス・エンリケ、スビサレータ、ホアキン、チキ・ベギリスタインなど、常に旬の選手たちが彩り、ユース年代でのタイトルは総なめ。
にも関わらず、ベスト8の壁すら崩せずにいつの大会でも姿を消した。国家集合体としての団結力が問題視され「スペインを推すやつは素人」とまで言われるようになっていた。
ドイツは90年にW杯優勝したチームを頂点として、選手の質は下降線を辿り、96年に制したEUROも選手のクオリティではお世辞にも最高の国とは言えるものではなかった。
98年に高齢化の問題が指摘され、EURO2000ではグループリーグ敗退という結果もさることながら、そのプレー内容が世界中の失笑を買った。
02W杯での準優勝で勘違いをしてしまい、EURO2004でまたしても過ちを繰り返した。これを糧に、指導内容を改革。自国での06W杯で3位という復活の兆しを見せた。
高レベルを維持しながらも勝てなったスペイン。低レベルながらも常に結果を残し続けるドイツ。
果たして、テクニックが精神を圧倒するか、精神がテクニックを凌駕するか。
◆試合開始◆6/29
え〜EUROの為に有給を取ってるワタシもバカですが、決勝をA台のバーで観戦した後、そのまま会社に行こうとしているAさん、Yさん、あなた方も相当バカです。
CLの時にでも、またご一緒しましょう。
さてさて、オープニングセレモニー始まってます。なんか、みんな楽しそうですね。ピチTのおねーちゃんも踊ってるし・・・。
国歌斉唱。選手情報、やっぱりバラックはスタメンです。トルコ戦後半と同じスタメンか。ラーム背低いな。
スペインはやっぱりビジャの変わりにセスク。トーレスの1トップにクアトロフゴーネス。
どちらもこれまでの試合から選ばれたメンバー。天候は晴れ。
緊張のキックオフ。
序盤はどちらも固さが目立つ・・・っと、S・ラモスの甘いパス。クローゼにかっさらわれ、プジョルが焦って掻き出す。固い・・・ガチガチだ。
決勝戦独特の緊張感に溢れまくっている。
5分を過ぎて、さすがに動けるようになってきたスペイン。両サイドバックも参加し、分厚い組み立てを見せ始めた。
ただし、意外にも序盤はドイツの方が楽に回しているように見える。スペイン、いつものプレスはどうした?
こうなったらスペインが固い、この時間帯にサクッと決めてしまいたいドイツだが・・・。
14分、ここでイニエスタへのスルー。抜け出た!ちょっと甘いシュートだが、メッツェルダーのクリアがゴールに。慌てて手を出すレーマン。オウンゴール寸前・・・。
スペインに自慢の味方を走らせるパスが出てきてしまった。やばいなあ。
トーレスのドリブル。メルテザッカーとの1対1、ここは強引に行き過ぎてメルテザッカーの勝ち。やっぱりリバプールのトーレスは戻ってきていない。
スペインがボールを持てるようになってきた。22分。右からのクロスに・・・トーレス!たっけえ。メルテザッカーの頭を遥かに越えるヘッド(肩にのっかったか?)
予想していなかったレーマン、反応遅れる。ポストに当たって跳ね返り、カプテビラのシュートは右へ。ここまでで、この試合、最大のハイライトだった。
今度はドイツ、CKからの折り返しにバラックのボレー。S・ラモスに当たる。そのままカウンター。トーレス、走る、走る。レーマン、プレッシャーでサイドにクリア。
今日のトーレスは燃えている・・・。本調子を取り戻すかもしれん。
28分、スペインのなんでもないクリアにカプテビラがペナルティエリアでコントロールミス。手に当たっ・・・・たね。お咎めなし。まあ、たまにある。
スペインの速攻にメルテザッカーのDF。ドイツのDFはここまでで一番良い。
前半33分。スペイン、シャビのスルーにトーレス。しかしラームが先にが追いつく・・・が、強引にもう一歩を抜け出すトーレス。1タッチ。しかもレーマンの上を超すシュート。
ボールはバウンドをしながらドイツのゴールの中へ。ゴーール!! スペイン先制。
動きは単純ながら、あの体の使い方は超人的。燃えていたトーレス。ついにエル・ニーニョ覚醒!大舞台で仕事をやってのけた。
調子が出てきたスペイン。イニエスタの切れ込み。右サイドから走りこむシルバ。どフリー。パスが上手く入った。ボレーは当たり所が悪く、ふかしてしまった。
ここでバラックが負傷。なんで?血出てます。外に出さないドイツ。いいのか?どうやらセナと接触した模様。
40分、ドイツのCK。得意のセットプレーだが、カシージャスのパンチ。ナイス飛び出し。しかし、バラックのプレーにクレームをつけてカシージャス、バラックにイエロー。
うーん。いらないカードだなー。
45分、スペインのCK。S・ラモスにラームが乗っかる。スペインが優勢じゃなくてラームがちびっ子でなければPKだったかも。
ここで前半終了。0-1。
前半の出来を見る限り、ドイツは悪くないものの、スペインの良さが出てきちゃったのでツライ。
クアトロフゴーネス、特にイニエスタがキレてきたので、ドイツDFは頑張っているものの、スペインが上回るシーンが出てきた。
さあ、後半スタート。
スペイン引き離すか。ドイツ追いつけるか。
ドイツ、選手交代。ラームが下がってヤンゼン投入。先制点の責任はラームっていうよりもトーレスのスーパープレーなんだけど。
レーヴ監督、保守的な交代はあまりよくないなあ。(どうやらラームは怪我だったようです)
5分、マルチェナのクリアがクローゼの股間に入った。いってえ・・・。前にフットサルで外人のFK股間に食らったことがあるが、ホント立てなかったからね。
でも、股間負傷で交代したくないよな。オレはしたけど・・・。
スペインのCK。シルバが処理に手間取ったが、抑えたシュート。S・ラモス、ヒールで引っ掛けようとするも触れず。ボールは外へ。
9分。さらにスペインのチャンス。1点目と同じようなシーン。トーレス、走る、走る。しかし、今度はレーマンが押さえ込んで処理。2度はやらせない。
ドイツはヒッツスペルガーを下げてクラニー投入。ビハインドなので攻撃的な交代は、たとえ結果的に駄目であっても評価できます。
そしてその直後の14分、プジョルが粘ったものの、奪い返したドイツ。左サイドのクロスにシュバイニー。ミスかと思った処理にバラックがボレー。
惜しくもボールは外へ。さらにドイツ。バラックのクロス。クラニーにはドンピシャ。しかし、一瞬早くカシージャスがクロスをカット。
17分、カウンターのドイツ。3対3。シュバイニーのシュート気味のパスは、クローゼに当たり、惜しくもラインを割った。
どうやら交代は吉と出たか。攻勢に出るドイツ。
ポドルスキとシルバがやりあう。お!シルバ、頭突き?一気にヒートアップする場内。W杯決勝の再現か。荒れるバラック。お前は一枚もらってんだからヤメロ。
スペインはここでセスクがOUT。シャビ・アロンソが入る。
さらに20分、熱くなったシルバに替え、サンティ・カソルラ投入。するとスペインが再び攻勢に。オフサイドになったものの、S・ラモスのヘッド。
さらにイニエスタのシュート。メッツェルダーに当たってクリア。決勝にしては、お互い攻めますね。いい試合です。
30分、残り時間も少なくなってきた。ドイツはバラックが良くない。思えば、スペインにはドイツでのバラックのようにチーム内で頭ひとつ抜けた存在はない。
ビジャの代役もセスクで成り立ってるし。ドイツはこのままバラックと心中するのか。
ここでトーレスとグイサが交代。追加点を狙うか。ドイツはクローゼとマリオ・ゴメスがチェンジ。点が取れないのはクローゼのせいじゃないのだが。
残り時間は10分・・・。
試合を壊しかねない、レーマンのエリア外でのハンドプレイが見逃され、スペインの早い攻撃。
グイサにドンピシャのクロス。それを中央に折り返す。フリーのセナ。しかし、からぶりのセナ。1点モノのシーン。際どかった。
43分。開き直ったドイツ。放り込みに徹する。
怖い。こうなったドイツは怖い。攻撃は最大の防御。前線で試合を作るスペイン。
もはや消耗戦。時間もロスタイム。プジョルは魂で守備をつづける。
そして・・・その時が訪れた。
タイムアップ。
スペイン優勝!!
長きに渡る呪縛を解き放ち、ついにスペインがついに栄冠を手にした。
最後の最後でついに爆発したフェルナンド・トーレス。
カップを掲げるカシージャス。喜びを爆発させるスペインイレブン。
S・ラモスは心臓発作で亡くなったプエルタのシャツを着てスタジアムを駆け回る。
結局、最後で「実力以上の見えない何か」は出ることがなかった。
結果を見れば戦力値通りの展開。粘り強く、チームの力を信じて戦えば、いずれジンクスは破られるということだ。
スペインの選手は大半が20代。おそらく2年後のW杯は勿論、現有戦力にさらに熟成を重ねたものになるだろう。
殻を破った無敵艦隊。恐れるものは何も無い。スペイン黄金時代、到来の予感。
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