EURO 2012
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Final

  【準決勝総括〜決勝展望】

驚くべきことに、決勝の組み合わせがグループリーグの初戦と同じ顔合わせになった。
TVでは、しきりに「ドイツは調子に乗りすぎた」「メンバーを代えたレーブの失策」という声が聞かれる。
それは、結果論である。しかし、マスメディアは『結果論を述べる人たち』なわけで、別に彼らの仕事としては正しい見解だ。
勝っていれば、絶賛されたレーブの采配は、裏目に出た。
ポルトガルは、決勝に行ってもおかしくない資質を備えた国だった。PKまでスペインを苦しめた以上、それは間違いない。
ベスト4の時点でどこが勝ち上がっても納得の国々ではあったものの、スペインの不調と、ドイツの不調は残念だった。
変化を与えないことで調子の戻らないスペインと、変化を与えたことで調子を崩したドイツ。
変化を与えないことで調子を取り戻したポルトガルに、変化を与え続けて調子を上げているイタリア。
そして、一方は調子の悪い方が勝ち上がり、もう一方は調子の良いほうが勝ち上がった。
こうして、奇妙な形で4国の実力差は均等になってしまう。
正解なんて無いというのが、この世界の常だが、今回の大会ほど、そう思ったことはない。
決勝は、恐らく調子が悪いながらもスペインが優勢に試合を進めるだろう、イタリアは一発の可能性次第だ。
運が悪ければ、ダラダラ攻め込まれて、ボコっと点を取られてイタリアが負ける。そんなシナリオになるかも知れない。
ただ、今回はイタリアがドイツ戦と同様に素晴らしいプレーでその可能性をひっくり返してくれることに期待したい。

 
Final (by ウクライナ)
   開催日: 2012年7月1日
スペイン 4 2-0 0 イタリア
2-0
【マッチレポート】
スタメンはサプライズは特になし。イタリアは、負傷者が多いが、なんとかベストメンバーを組んできた。
スペインはセスクのゼロトップを採用。なんだかんだで、消去法で一番効果的だった陣形だ。
開始序盤こそ、イタリアが攻め込む形を見せたが、結局はスペインがキープする状態で落ち着いた。
イタリアは最終ラインのクリアが不安定。そして、14分。早くも均衡が破れる。セスクがエンドライン際までドリブルで上がり
クロスを入れる。そのボールはシルバの頭に届き、スペインが先制ゴールを上げた。
このゴールを見た瞬間に、多くの人間が、やっぱりドイツが勝っていたら面白い試合になったのに・・・と思ったかも知れない。
しかし、ドイツにはその権利すらないのだ。やはり、敗者は何を言われても惨めなだけである。
キエッリーニが負傷でバルザレッティが交代。ケガを押していただけに残念。彼がいなくなる最終ラインは不安だ。
イタリアはCKを含め、バロテッリのバネと高さを生かそうという試みに見える。多くないチャンスでも、高めのボールが、それを
うかがわせる。スペインのポゼッションがイマイチはまらなくなってきて、イタリアもミドルを放つようになる。
ここで点が取れれば、一気に試合は分からなくなる。しかし、結果はそうはならなかった。
カウンター気味のボールに駆け上がるジョルディ・アルバ。そのまま駆け抜けて、追加点をゲット。前半終了間際で2-0。
前半が終了して、ちょっと驚くデータが。
なんとポゼッションはイタリアの方がわずかに上。そうか〜。
後半5分、バロテッリがサイドに逃げて、中央はカッサーノに代わったディナターレが担当。これでマークが散ってイタリアの
攻撃がスムーズに。シュートがあわや、というところでカシージャスに止められる。
ここでイタリアはモントリーボに変えてモッタを投入。うーーむ。
で、この疑問の交代が悪い結果を生むことに。Sラモスのタックルを受けたモッタが、早々と負傷。すでに3枚の交代を使い
担架で外に出されたモッタを代えられないイタリア。10人で試合を進める。
どうやら無理やりベストメンバーを揃えたことが仇になったアッズーリ。
こうなってしまうと、なんだか試合の緊張感が薄れる。
「結局、このままスコアは変わらずに終了だろ」という雰囲気だ。
バロテッリが下がり目でボールを受ける位置にいるが、そうなるとディナターレへのロングパスがバレバレ。
攻撃の組み立てが上手くいかない。
後半30分、スペインはセスクに代えて、トーレスを投入。2点差で一人有利な状況ならワントップでも構わない。
むしろ攻撃を活性化させておこうということか。
結果、この試みは成功に終わる。
攻撃の意識が明確に蘇ったスペインは、単純な縦のスルーパスを狙う。
39分にダメ押しの3点目をトーレスに奪われ、イタリアは戦意喪失言ってもいい。これで決まり。どうにもならない。
イニエスタとマタを交代で代えて、スペインのミッションは終了。
優勝の瞬間を待つだけに思われたが、最後におまけがついてきた。
ゴール前でフリーのトーレスに渡り、走りこんだマタに折り返す。
落ちついてゴールに流し込んだマタが4点目を決めて、バロテッリはしゃがみ込む。
EUROの決勝としては、危惧された通りの結果となったとしまった。
スコアを見れば刺激的な試合だが、内容はさほど刺激的でもない。
ここ十数年、EUROの決勝はドキドキものだった。それが、なんとも味気ない戦いだ。
ケガでメンバーから外れたプジョルとビジャはスタジアムの脇でツィッターで優勝報告を始める。
駆け込む準備を始めたスペインイレブン。
笛が鳴らされ、史上初のEURO連覇が決まる。
遮るスポークスマンを突き飛ばしながらスタジアムを立ち去るバロテッリ。2位のセレモニーは拒否か。
思えば、決勝にたどり着いた時点でイタリアに余力は残されていなかった。
できればドイツとスペインの戦いを見てみたかったが、それは言うまい。
内容だけで結果が手に入らなかったスペインは、4年前の優勝で、内容がまずくても結果が手に入る国となった。
スペインは否定される言われはないだろう。参加した中で最も強かったのは間違いない。
問題があるとすれば、他の国だ。なんとしてでもこれ以上の栄冠をスペインに与えてはいけない。

セレモニーを前にバロテッリが戻ってきた。
敗北を認めてこそ強くなれる。これから10年以上イタリアの前線を担える逸材だ。
大敗したとはいえ、誰もここまで来たイタリアを蔑むものはいない。期待以上の成績だ。

メジャー3連覇を果たしたスペイン。今現在、最強の国だ。
ヨーロッパでここまで強さを見せ付けられると、倒せるとすればブラジルかアルゼンチンくらいだろう。
アンリドロネー杯がカシージャスの手に渡され、王者の雄たけびを上げる。
涙を流すバロテッリ。責任を感じ、プランデッリに慰められるモッタ。これからのイタリアを変えるは君たちだ。
4年後、スペインはまだ最強の座にいることができるのだろうか。


  【大会総括】
全試合が終了した。
ポーランドとウクライナは「出場国に対しての開催国」という役目は果たしたものの、国民に対してのホスト国」の役割は
果たすことはできなかった。フットボールでは大国に適わない国だけに、国民一丸というか、負けたら許さない感がなかったのが
開催国としては物足りなかった。
EUROはW杯に比べ、移動や環境の変化が少なく、実力どおりの結果が出せると言われるが、今回もそうだったと思う。
オランダが敗れるなどのサプライズはいくつかあったが3敗ともなれば「実力どおり負けた」といわざるを得ない。
全体を通して「ストップ・ザ・エスパーニャ」だったのだが、結果、それができるチームは表れなかった。
以前も言ったが、スペインのスタイルはバルサのスタイルとは違う。
攻めるためのポゼッションではなく、負けない為のポゼッションである。
あんなものはつぶしてくれた方が良い。ドイツ、イタリアはその可能性を示してくれた。ポルトガルもパウロ・ベントに戦術が加われば
なんとかなったかもしれない。スペインが現状で歩みを止めてしまえば、栄光は続かない。
もう少し・・・。もう少しだけスペインの栄華は続く。






  【ベストイレブンの選定について】
11人の選出については異論はない。コエントランがちょっと微妙ではあるが、ロナウドへのパス供給率を考えれば、
このマドリーコンビの功績は大きく、二人で一人といったところか。
バロテッリは、もしかすると自滅してしまうタイプの選手だが、ここまで大器の才能が見せられれば、簡単には消えない。
むしろ、ここからさらに成長できるだろう。まだ21歳。大学生の年齢だ。
ロナウドはなんだかんだ言って、実力の違いを見せ付けた。個に固執して、なおチームを引っ張った。恥じることは何もない。
キャバイエはフランスで唯一の光明。リベリーは孤立しすぎだったので選外、調子は悪くなかったが残念。
ピラルの高速ドリブルは02のホアキンを見るようだ。ビッグクラブに移籍してほしい。
イニエスタ・ピルロ・ケディラに関しては、非の打ち所が無い。
キエッリーニはケガが悔やまれるが、いる時の安定感は素晴らしかった。
デ・ロッシは新境地を開拓。古臭いリベロというポジションが、見事に最先端のシステムとして復活した。

次点の選手には何人か解説が必要な選手がいるだろう。
まずは、またもスウェーデンを勝たせられなかったイブラヒモビッチ。Cロナウド同様、勝っても負けても責任がつきまとう
絶対的なエース。しかし、ピッチ上では違いを見せ続けた。調子自体も悪くなかったし、結果だけが上手くいかなかった。
ロイスは、ドイツにとっての新しい発見。エジルが大化けするはずの大会で、脱皮に失敗してしまっただけに代替選出。
ジェラードはイングランドの攻撃を一人で支えていた。結果がイマイチだったので次点扱い。
ラームに関しては迷った。イタリア戦までは、彼はドイツの要だった。しかし、イタリア戦でのパフォーマンスは何もいえない。
これで一気にワーストに入る可能性はあったが、プラマイで言えばまあプラスで、次点扱いは良いと思う。
ジョルディは決勝のゴールでコエントランを上回ったかもしれないが、チーム内で絶対的な存在でもなく、これからの選手。
名前の通り、バルサにルーツがあるバレンシアの選手で、今夏バルサに戻るっぽい。期待の逸材だ。
Gkはブッフォンは決勝での失点が悔やまれる。まあ、カシージャスかブッフォンのどちらかがその負い目を背負うわけだが
ここは負けたほうが選外ということで、次点は準決勝でスペインを完封したルイ・パトリシオに。
監督は、新しいイタリアを作り上げたプランデッリで文句なし。決勝の最後の交代カードには疑問符は残ったが、彼を上回る
監督は、今回は存在しなかった。
アンニュイな表情が得意なポルトガル人フェルナンドサントス。
ギリシャの監督として、初戦の采配は見事だった。結果、ベスト8に進んだことが何よりも評価に値する。


【MVP】
個人的な『MVP』はピルロだ。
昨年のミラン→ユベントスの移籍で終わった選手だと思われていたピルロは、ユーベの「へそ」
として、優勝に大貢献。その調子を持続したまま、EUROでも活躍した。PKはまさにその象徴。
ベテランここにあり。スペインが全員で手にした勝利だけに、ここはイタリアを引っ張った大黒柱に最優秀を捧げたい。






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